ピアノ 音楽教室 使用料請求

ピアノ教室で演奏練習すると著作権料を徴収されるようになります

JASRAC(日本音楽著作権協会)が6月7日、ピアノ教室等で演奏する場合に、受講料の2.5%を徴収するという使用料規定を文化庁に届け出た、というニュースを見ました。
2018年1月1日から実施するとのことです。

JASRACの使用料徴収規定の概要

  • 請求先:音楽教室
  • 対象の音楽:JASRACが管理する著作物
  • 使用料が発生する条件:上記の音楽を音楽教室で演奏する場合
    (先生が指導の為に演奏するもの、生徒が練習で演奏するものの両方)
  • 使用料:教室が得た受講料の2.5%
このニュースを見たとき、音楽教室でピアノを練習するだけなのに、使用料を請求するってなんで?と思いました。それでちょっと調べてみました。

JASRACの言い分

JASRACは楽曲の著作権を管理し、使用料徴収を代行する一般社団法人です。

今回は、著作権に含まれている「演奏権」というのが対象になっています。

演奏権は、公衆に楽曲を聞かせることを目的として演奏することができる権利のことです。

JASRACは、ピアノなどの楽器の演奏を教える音楽教室は「公衆に演奏の場を提供している」と判断しました。

そして、そこでの演奏に、この演奏権が及ぶと判断したので今後は使用料を取ります、ということです。

JASRAC理事で弁護士の玉井克哉さんのコメント

「音楽教室の指導そのものが、他人の創作を用いた営利事業。得た利益の一部を創作者に払うのは、当然ではないか」

使用料が発生するかどうかのポイント

ここでのポイントは「公衆」というものの解釈です。

実は、過去にも公衆の解釈をめぐる裁判があって、その結果、「カラオケ店でのカラオケ曲の再生」や、「社交ダンス教室でのダンス曲の演奏」が、公衆にあたるという判決が下っています(そしてJASRACは現在、これらから使用料を徴収しています)。

それゆえに、JASRACは音楽教室も公衆に該当すると踏んだようです。

音楽教室側の反論

音楽教室側も当然黙ってはいません。

音楽教室大手のヤマハ音楽振興会は、「教室での演奏には著作権は及ばない」としています。そして、「JASRACへの支払い義務がないことの確認」を求める訴訟を、東京地裁に起こすようです(7月の予定)。

音楽教室側の主張

著作権が及ぶのは公衆に聴かせるための演奏で、音楽教室での練習や指導のための演奏は該当しない

アーティスト側の意見

ところで、使用料を受け取る側のアーティストは、どう考えているのでしょうか?

やはりと言うべきか、アーティスト側からも使用料徴収に反対意見が出ています。

作詞家の及川眠子さん(「残酷な天使のテーゼ」を作詞)は、「音楽教室で「練習のために」弾いたり歌ったりするものから、使用料をもらいたいと思ったことなどない」等とツイートしています。

宇多田ヒカルさんも「無料で使ってほしい」とのツイートがあります。

JASRACは、「彼女たちのような考え方は少数派」だと言っていますが、果たしてそうなのでしょうか?

ネットで「使用料徴収に賛成」で検索してみました。すると、クリエイターに直接アンケートしてみた、なんていう記事もありました。

それで見ると、音楽でご飯を食べているプロの人であっても、今回の件で使用料徴収に賛成する人は半分もいないようなのです。

やはり、宇多田さんらが少数派だという指摘はあたらないと思われます。

無理がある上に音楽業界にもマイナスでは?

率直に言って「音楽教室の中で、生徒が演奏技術を向上させるために繰り返し練習する」ことが公衆に当てはまるかというと、、、これは無理筋な気がします。

それに考えてみてください。生徒さんは将来ミュージシャンになるかもしれないのですよ?

ミュージシャンが増えれば、JASRACも将来的に恩恵を被るわけだから、音楽界発展のために、本来なら、JASRACが音楽教室に支援金を出してもいいくらいです。

それがあろうことか、使用料を徴収するというのだから、JASRACは音楽業界を衰退させたいのだと思わざるを得ません。もしくは単純に、営利のみを追求していると受け取られてもしょうがないと思います。

今後どういう方法が考えられるのか

そもそもJASRACは、著作権管理の「代行」をしているだけですから、著作権者自身が望まないことをやっているのはおかしいとも思います。

しかし、 著作権に詳しい弁護士の話として、「JASRAC管理楽曲については、原則として著作権者本人の意向に関わらず、JASRACが権利行使を行う」と出ていました。

それなら、新しく音楽著作権管理団体を起こして、JASRACから脱退するという考え方も出てきそうですが、それも簡単ではなさそうです。

現在、既にJASRAC以外の著作権管理団体はありますが、シェアは低いです。JASRACは9割以上のシェアを持っているようです。

それでも今後、他の著作権管理業者が成長して、競争状態を少しでも強くすることができれば、多少の変化も見込めるのではないでしょうか?それと合わせて、著作権者側から意見を出せば、JASRACも無視はできなくなると思います。

まとめ

JASRACが、「音楽教室でピアノ等を演奏する場合に、使用料を徴収する」と決めた、という話でした。

個人的には無理筋な話だなあと思います。音楽教室側が、7月に訴訟を起こすようなので、その結果を注視したいと思います。