ピアノ 音楽教室 集団提訴

ピアノ教室側が、JASRACを集団提訴しました

ピアノ教室等での演奏に対し、JASRAC(日本音楽著作権協会)が著作権の使用料徴収を決めたことを受け、ヤマハ音楽振興会など音楽教室を運営する249社が6月20日に、JASRACに使用料請求権がないことの確認を求める集団訴訟を東京地裁に起こしました。
以前このコラムでピアノ教室で演奏練習すると著作権料を徴収されるようになりますを取り上げました。今回はその続報になります。

前回記事の時点では、提訴は7月の予定、とあったので、ちょっと前倒しになった格好です。

ピアノ教室側の主張

音楽教室における著作物使用にかかわる請求権不存在確認訴訟においての主張

著作権料を徴収できるのは「公衆に聞かせる目的の演奏」で、レッスンでの演奏に著作権は及ばない
教育目的での演奏は、著作権使用料が必要となる「公衆に聞かせる事を目的とした演奏」ではなく、昭和46年に著作権法が施行されて以来、音楽教室は対象外として運用されてきた、としています。

また、作曲家や演奏家を育てるには楽曲演奏が必要であり、著作権使用料の徴収は音楽文化の発展の妨げになると主張しています。

著作権使用料が不要である根拠の詳細

  1. 「公衆」に対する演奏ではない
  2. 「聞かせることを目的とした」演奏ではない
  3. 著作権法の立法目的にもそぐわない
「公衆」に対する演奏ではない
ピアノ教室などにおける演奏は、教師と生徒による教育目的の演奏であり、特定かつ少数の者しかいない場である。これは公衆に対する演奏ではない。

教師と少数の生徒によるレッスン演奏が、公衆に対する演奏とは考え難い。著作権法制定後、45年以上の間、社会教育における教室での授業については、演奏権が及ばないと理解されてきた。

「聞かせることを目的とした」演奏ではない
ピアノ教室などにおける演奏は、教師の演奏、そして生徒の演奏のいずれも、音楽を通じ、聞いている者に官能的な感動を与える事を目的としていない。

すなわち、「聞かせることを目的」とはしていない。

著作権法の立法目的にもそぐわない
教育用の著作物利用は、著作権法第1条の「文化的所産の公正な利用」に含まれる。また、音楽教室という社会教育なくして音楽文化の発展はあり得ない。

つまり、社会教育における音楽教育は、「文化の発展に寄与する」という著作権法の目的を実現するものである。このような著作権法の目的に背を向けるような第22条の解釈は、到底許す事ができない。

JASRACの主張

前回の記事にも書きましたが、JASRAC側は、「ピアノ教室等が公衆に該当する」、と解釈しているようです。

また、演奏権は、公衆に楽曲を聞かせることを目的として演奏することができる権利のことなので、ピアノ教室での演奏目的が、聞かせることなのか?と言うのも重要です。

すなわち、今回の訴訟は音楽教室が「公衆の場になるか?」「演奏目的は聞かせることか?」がポイントになると考えられます。

ピアノ教室側に死角はないか?

率直に言うと、管理人は前項までに挙げたピアノ教室側の主張がすごく腑に落ちます。対して、JASRACの主張は無理筋ではないかと感じています。

つまり、ピアノ教室側の肩を持ちたいわけですが、ここであえて、ピアノ教室側に問題点は本当にないのか?を考えてみたいと思います。

ピアノ教室で問題が起きそうなケース

人気の楽曲を宣伝に使用して、音楽教室が生徒を募集する場合
「ウチでは、あの大人気の楽曲を教えています!」と、特定の楽曲を宣伝して、音楽教室が生徒を募集することは起こり得ます。それは、楽曲の「タダ乗り」なのでしょうか?

音楽教室も営利事業である以上、生徒を募集しなくてはなりません。そのため、教室の売りとして、人気のある楽曲を使うことは当然あり得ます。

現時点では、音楽教室から著作権使用料は徴収されていませんから、この様な場合、音楽教室は宣伝に楽曲を使い、利益を得る(生徒獲得)にもかかわらず、著作権者には利益が還元されない、という問題が発生する可能性があります。

深刻な影響はないと思われる
ただし、、、この場合も、著作権者の権利がどれだけ侵害されるのか?という点で考えてみると、大きな影響はない様に感じます。
  • 音楽教室で楽曲が使われた結果、CD等の売り上げが減る、と言うのは考えにくい
  • むしろ、その楽曲が好きになってCD等の売り上げに貢献する、のが考えやすい
  • さらに、間接的ではあるが、その楽曲の人気度が上がる効果も見込める
  • そもそも、音楽教室での楽曲利用に使用料を請求したいと考える作曲家・作詞家がどれだけ存在するのか?
ピアノ教室側に問題があるとしても、今回のJASRACの無理筋な主張に比べれば、問題の程度は低いのでは?と考えられます。そこは別途、問題解決に向けて知恵を集めれば良いように感じます。

いずれにしても、今後もこの件は注視していきたいと思います。